2024年 沖縄大学寄附講座の取り組み【報告】
連合沖縄は、沖縄大学の学生を対象に4月~7月にかけて15講義「沖縄大学寄附講座:沖縄労働論」を開催しました。講座では、労働組合の成り立ちや必要性、各構成組織の現場の実態や課題、労働組合としての取り組み等、働く者を取り巻く諸問題や実態について具体的に理解することで、これから社会に出て働く学生が、自ら解決に向けて考える力を培うことを目的に開催しました。
【第1回:4月10日】連合沖縄:仲宗根 哲 会長
テーマ:「連合沖縄とは?~働くことを軸とする安心社会―まもる・つなぐ・創り出すー」
(1)労働組合とは (2)連合・連合沖縄とは (3)各組織の主な役割について
労働組合とは、弱い立場にある労働者が団結して労働組合を結成する事により、経営者と対等の立場に立ち、団体交渉を通じて安心して働く職場環境や労働条件の向上を実現していくことができる。産業別組織は、同じ産業に属する企業別組合が加盟し、産業全体に関する労働条件や産業政策等の課題に取り組んでいる。連合は、全国中央組織として労働運動の一体的な推進を果たし、産業や地域では解決が難しい課題に取り組んでいる。
また、47都道府県に地方連合会を設置し、地域の働く人の拠り所として、地域政策の実現や労働相談、組合結成の支援等に取り組んでいる。学生の皆さんが社会に出た時に、様々な問題や課題に直面することがあると思う。労働組合の取り組みや必要性について学び、社会に出た際に労働組合の連合を覚えていて欲しい。
【第2回:4月17日(2部構成)】沖縄県労福協:神里 直樹 氏
テーマ:労働者福祉事業について(沖縄県労福協の取り組み)
(1)沖縄県労福協について (2)ろうきん こくみん共済coop働く仲間のゆめ・みらい基金の取り組みについて
生活困窮者自立支援事業やパーソナルサポート事業、子育て支援・ファミリーサポート事業や就労サポート等の取り組みや、沖縄県の社会問題である子どもの貧困問題への対応として、「ろうきん こくみん共済coop働く仲間のゆめ・みらい基金」について紹介。子どもの貧困の背景には、親の貧困がある。貧困の連鎖を断ち切り、解決・改善に向けた自立支援の取り組みについて紹介。
沖縄県労福協:濱里 正史 氏
テーマ:連合における「政策・制度要求」の取り組みについて
(1)政策・制度要求と提言の取り組みについて
連合は、日本最大の労働団体として国や都道府県へ労働者を代表して働く者の立場に立った政策・制度要求を行っている。日本政府への政策・制度要求は連合が行い、各都道府県への政策・制度要求は地方連合が行っている。連合に加盟する労働組合から様々な声を集めることができ、働く現場の声を政策・制度に反映することができる強みがある。沖縄県が抱える子どもの貧困問題や米軍基地の問題、雇用施策や労働環境の改善なども働く者を代表して取り組んでいること等を紹介。
【第3回:4月24日】沖縄労働局:柴田 栄二郎 労働局長
テーマ:沖縄県の雇用・労働環境について
(1)働くことに関する法・制度とそれを担う行政分野 (2)沖縄労働局が管轄する県内5つの労働基準監督署や公共職業安定所で行っている行政サービスについて (3)沖縄県の人口の推移 (4)労働市場(雇用情勢)の状況 (5)労働環境などの状況 (6)女性活躍、障がい者の雇用 (7)労働行政の課題と取り組み等について
仕事は自分で探していろいろ悩んで決める事になる。沖縄の雇用情勢が悪い状況にあるが、良い企業は多く存在する。全国最下位という県民所得を企業も労働者も一緒に努力して少しでも賃金を引き上げて、沖縄の経済を盛り上げてほしい。
【第4回:5月1日】のぞみ法律事務所:金高 望 弁護士
テーマ:ブラック企業・ブラックバイトと弁護士
(1)ブラック企業・ブラックバイトとは? (2)労済審査請求の実態 (3)沖縄県内の事例
(4)ブラック企業・ブラックバイトとどう対峙するか
ブラック企業とは、広辞苑では「従業員を違法または劣悪な労働条件で酷使する企業」と定義しており、厚生労働省は「若者の使い捨てが疑われる企業」と定義している。皆さんが良く知っている大企業でも過去に過労死事件を起こしている。ブラック企業と言われる企業では、①長時間労働、②残業代不払い、③詐欺まがいの契約、④管理監督者制度・裁量労働制の濫用、⑤パワーハラスメント、⑥過労鬱、過労自殺、過労死の隠蔽等がブラック企業の特徴である。
沖縄県内でも、長時間労働により脳梗塞で倒れた若者の労災認定された事件(26歳)や長時間労働が原因による自殺未遂(42歳:労災認定)事件、居酒屋店長の長時間労働(月164時間の残業)が原因による過労自殺事件(30歳:労災認定)など私たちの身近な場所で起きている。皆さんが大学を卒業して近い時代に直面してもおかしくないような内容である。
ブラック企業は、労働者が自分の生活と権利を守るための「労働法」を(使い方を含めて)知らないことを利用して、企業が都合のいいように労働者を扱ってくる。労働者は、労働者を守りうる知識という「武器」を身につけておかなければならない。ブラック企業で使い潰されてしまう前に、ルールを守る別の企業へ「逃げるが勝ち」も選択肢のひとつ。今日の知ったことをこれからの就職活動やその後の働く生活の場で活かしてほしい。
【第5回:5月8日】沖縄大学:島田 尚徳 准教授
テーマ:沖縄ではたらく わたしのキャリア
(1)キャリアとは? (2)大学で学んだこと (3)計画的偶発性理論について
人が生涯にわたって積み重ねていく職業や生活に関する経験・活動・役割の連鎖がキャリアとなる。自分の人生の中で仕事は一部かもしれないが、仕事の時間は私たちの生活を大きく占めている。自分自身が大学生活で学んだことや新聞記者に就職したこと、その後、県外シンクタンクで勤務したこと等を紹介。将来の目標を持ち生活することも良いが、変化の激しい時代を生きていくためには若い段階で明確なゴールに固執し過ぎなくてもいい。様々な変化に対処しながら学びや気づきを得ていくのも重要。大学生活を通して夢中になれることに出会ってほしい。
【第6回:5月22日】沖縄県社労士会:玉城 巌 社労士/ 西里 まどか 社労士
テーマ:知っておきたい 働くときの基礎知識
(1)社会保険労務士について (2)働くときの基礎知識 (3)社労士法人TISの取り組み (4)なんのために働くか
社会保険労務士は、会社と顧問契約を結び、働く人にまつわる「あれやこれや」をするのが仕事。採用支援や入社・退社等の手続き、出産・育休・介護休業などの給付手続き、就業規則やその他規程づくり等の会社のルール、労務相談、社内研修、コンサルティングや障害年金の申請など個人を助ける仕事も行っている。働くときの基礎知識として、労働条件通知書や給与明細の確認、社会保険や労働保険等の控除される税金の仕組みについて説明。
西里社労士から、「なんのために働くか」について考える内容をテーマに講義。働く理由は人それぞれあると思う。好きな物を買うために働いている人もいれば、生活のために働いている人もいると思う。一般的な会社員は1日8時間前後働くことが多い。起きている時間の約半分を仕事に使うことになる。この仕事の時間が楽しくなければ、日々の生活が憂鬱な状況になる。単純に働いているだけで幸せになる事は難しい。それを「こうすれば働きやすくなり、会社が良くなる」など、皆が幸せに近づくアドバイスを社労士として行っている。米イリノイ大学エド・ディナー名誉教授の研究結果では、幸せな人は普通の人に比べて生産性が31%高く、売り上げも37%高い。創造性も3倍高いという結果がある。社員が幸せになれば会社全体が幸せになり、社員や会社が幸せになれば顧客にも幸せが伝わる等と講演。
【第7回:5月29日】連合政治センター:照沼 光二 局長
テーマ:労働組合と政治活動
(1)労働組合政治活動 (2)連合の政治理念 (3)公職選挙法・世代別投票率の推移・世代人口
(4)日本の教育等への公的支出の割合 (5)主権者教育 (6)政治資金規正法
(7)ウェブサイト等を利用した選挙運動
労働組合は、国や県、市町村の審議会等に労働者を代表し意見反映を行う「政策実現活動(政策・制度要求)」をはじめ「政治教育活動」、日常的な活動を積み重ねることで組合員の執行部に対する理解と信頼の向上に向けた「組織強化活動」を行っている。連合は政治理念として「政府、政党などとは異なる自主的組織として主体性を堅持しつつ、目的と政策を共有する政党および政治家と協力して、労働者とその家族の労働と生活環境の改善をはかり、真の『ゆとり・豊かさ』を実現する」と謳っている。労働組合の基本目的である「雇用と生活の安定」を実現するためには、企業内労使間での労働諸条件の改善に取り組むだけでは十分とは言えないため、働く環境に影響するさまざまな法律、暮らしに直接響く税や社会保障などは国や地方自治体によるところが大きい。国や地方自治体に直接働きかけられるよう「連合の政治理念」を共有できる政党や政治家と連携・協力していく必要がある。
また、連合の求める政治として、「与野党が互いに政策で切磋琢磨する政治体制の確立が重要であると考え、そのため政権交代可能な二大政党的体制」をめざしている。安倍政権以降、自民党一強の時代が続いている。権力は長く続くと腐敗すると言われている。今現在、自民党の政治と金の問題も大きな社会問題となっている。政治に緊張感をもたらすためにも、政権を担える政党が必要と説明。
【第8回:6月5日】那覇・南部地協:大木 庄太 事務局長
テーマ:就職に役立つ労働豆知識~労働相談実例から~
(1)就職にあたり必要な心構えと準備 (2)労働契約と就業規則 (3)労働条件(法的知識) (4)労働相談の実例
(5)もし自分に労働問題が起きたら等について
日本の経営者と労働者の割合は、経営者が約2割、残りの8割が労働者という結果が出ている。経営に関する知識も大事だが、労働に関する知識を学ぶことはもっと大切。経営者になったとしても、労働者を雇う時に役立つ大切なことが含まれている。
「経営の神様」と言われるパナソニック創設者松下幸之助氏は、「企業というのは、社長の私物ではなく、おおやけのうつわ(公器)である。企業は社会に存続させてもらっているので、自社の利益だけを追求するのではなく、社会にも貢献する責任と役割がある。松下電器は、人をつくるところであり、あわせて電気製品もつくっている。企業の存在はかかせないものの、人があってこその事業であり、そこで働く人を財産として重宝し、時代に合った人材を育てることを大切にする企業でなければ、今後ずっと生き残っていけない」と述べている。様々な法律やルールを守らない企業も多く存在するが、労働者を大切にする良い企業も多くある。今後の就職活動や就職後の参考にしてほしいと説明。
【第9回:6月12日】自治労:前底 伸幸 執行委員長
テーマ:公務職場での労働について
(1)自治労ってなに? (2)公務職場の労働について (3)公務員の労働基本権の制約 (4)小泉構造改革による変化
(5)組合活動の役割と課題等について
自治労は、公務公共サービスを提供する労働者で組織しており、4つの目的(①組合員の生活水準を向上させ労働者の権利を守ること、②やりがいのある仕事ができるように話し合いや考える場を提供すること、③労働者相互の助け合いとして組合員へ福祉事業を行うこと、④社会正義を実現すること)目的に掲げて取り組んでいる。
公務職場の労働組合は民間の労働組合と違い、労働基本権(労働三権)に制約がある。①団結権…警察職員、消防職員は団結が禁止されている。②団体交渉権…当局と交渉することはできるが、団体協約を締結する権利は有しない。③争議権…争議行為等は禁止されている。公務職場は、小泉構造改革により、郵政民営化や道路公団民営化、独立行政法人、指定管理者制度等、公務員を減らしていく政策が進められてきた。その改革の付けもあり、公務職場も人手不足の状態が続いている。組合活動の役割と課題として、①安心・安全な公共サービスの提供体制の確立、②職員(組合員)の意識改革とスキルアップ、③世論への啓発活動(地方自治体の役割と責務)、④対等な国・地方の関係構築(地域実情に即した政策の実施)等を紹介。
【第10回:6月19日】全駐労:與那覇 栄蔵 執行委員長
テーマ:全軍労・全駐労沖縄地区本部の闘い
(1)駐留軍労働の歴史的経緯と身分の変遷 (2)米軍に厳しく規制された沖縄の駐留軍労働 (3)米軍基地及び基地労働の特殊性
(4)米軍の労務管理及び労使関係の実態 (5)労働組合の運動が展望を切り開く等について講演と全軍労の闘いの歴史DVDの上映
沖縄の米軍基地には約9000名働いており、職種も1300程ある。日本政府が雇用主で米軍の下で働いている人達が駐留軍従業員である。第二次世界大戦で日本が負けて27年間、米軍の施政権下にあった。米軍が沖縄を占領して米軍の下で法律も含めて全て権限は米軍にあった時代があった。米軍は自分たちの良いように日本人従業員を使いたいため労働組合を敵視しつくらせないように邪魔をしてきた。権利もなく賃金も安い、退職金もない状況の中で先輩達が立ち上がり労働組合を結成し世界一の米軍と対峙してきたのが全軍労(全駐労)である。米軍とは闘いに次ぐ闘いの連続であった。
労働組合がなければ、ぞっとするような実情であり、先輩方の勇気・団結に感謝している。現在、労働組合の組織率が非常に低くなっている。日本の賃金も世界に見劣りする賃金水準になっている。この状況を改善するためにも働く者が団結して声を上げなければならない。労働組合を強くしていく事が重要であり、これから皆さんが働く上で大事になってくる等と講演。
【第11回:6月26日】UAゼンセン:喜納 浩信 支部長
テーマ:労働組合の役割と意義
(1)人生の3大出会い (2)多様な職業観 (3)良い職場の条件 (4)働きがいの持てる明るい職場をつくるために
(5)労働組合の重要な機能 (6)民間労働組合の統一労働条件要求について
人生の中で生まれてから働き、結婚する過程の中で、3つの大きな出会いの場面がある。その中のひとつが仕事である。UAゼンセンのアンケートでは、やりたい仕事に就くことができたと言える人は1割程度である。やりたかった職種には就けていない人が約5割。やりたくない・興味がない仕事に就いている人が2割、今すぐ辞めたいと考えている人が2割程度いる。UAゼンセンに加盟する組合の中でも年間3割程度が辞めていく傾向にある。どういう職場でどのように働き、どういう人々が働いているのかも関心を持ちながら就職先を選んで欲しい。
労働組合の重要な機能として、①要求する機能・交渉する機能、②監視する機能、③相互扶助の機能がある。働きがいの持てる職場、安定・安心して働ける職場を作るために要求し、団体交渉を行い、より良い職場を目指して活動を展開している。UAゼンセンは、春季生活闘争において「①正社員組合員の月例賃金改定要求、②時間給制社員の賃金改定要求、③正社員組合員の年間一時金改訂要求、④時間給制社員の一時金制度の改訂要求」を統一交渉として行い、賃金引き上げを勝ち取ることができた。働きがいの持てる明るい職場を実現するためには企業組織だけでは不十分であり、労働組合として生産性三原則の考え方を労使で共有し、労働条件の維持・改善や働きがいの向上をもたらす職場にしていくことが「企業の永続的発展=雇用の確保」につながっていく等と労働組合の役割と意義について講演。
【第12回:7月3日】沖教組:木本 邦広 中央執行委員長
テーマ:教職員の働き方の現状と課題
(1)沖縄県の教育現場の現状と課題そして展望 (2)子供たちの大人になったらなりたいものランキング
(3)せやろがいおじさん「教員の働き方改革」動画の上映
教員が子ども達と接する時間(登校から下校まで)は、小学生で1日約9時間、中学生になると部活動も含めると約12時間程度、保護者よりも長い時間を教員と過ごしている。教育現場では、朝8時~放課後の活動までタイムスケジュールが組まれており、空き時間がなく給食も5分程度で食べ、教材研究の時間や子どもと向き合う時間的余裕がなく、いじめや不登校が増えている。
沖縄県内では教員が足りない状況が続いている。長時間労働や精神疾患での休職率も全国ワーストとなっている。休職している教員の業務を他の教員で連携してどうにか授業を進めており、学校によっては校長や教頭が教壇に立つこともある。教職員は民間の法律とは違い、どれだけ残業をしても給特法という法律で4%の定額の残業代しか払われていない。働く立場としては、教員を増やし、業務を減らす等の「働き方」の部分を求めていたが、文科省は、この4%を10%に引き上げるような話が出ている。もっと働き方の部分に目を向けるよう労働組合として国の方にいろいろ働きかけをしている。教職員の現場では様々な課題が山積しているが、その課題を打開していくためにも労働組合の運動が重要となる。正規教員の採用増、長時間過密労働の解消、給特法の廃止・見直し、部活動の地域移行等、働く者の立場から声をあげていく必要がある。教職員の働く環境の改善は、子どもの学ぶ権利の保障にもつながる等と講演。
【第13回:7月10日(2部構成)】労働者福祉事業について 沖縄県労働金庫:上原 郷 氏 ・ 大城 武道 氏
テーマ:「沖縄県労働金庫の取り組み~働く人のためのくらしのお金~」
(1)<ろうきん>とは~設立の背景~ (2)知って得する金融クイズ (3)ろうきんの取り組み
ろうきんは、日本で唯一の「働く人の福祉金融機関」であり、全国規模で事業を展開している金融機関である。ろうきんが出来たのが約70年前、当時の日本は戦争に負け復興・復旧がメインとなっていたため、銀行は企業への融資や経営者への融資をメインに行い、個人への融資は対応していなかった。そのため、労働組合や共済会等の働く仲間がお金を出し合い、自分たちで銀行を作ろうと出来上がったのが「ろうきん」である。銀行は、株式会社であり、株主の意見を聞いて運営し、そこで生まれた利益は株主に還元されている。ろうきんは、みんなでお金を出し合って公平・公正に運営して福祉金融機関であり、実際の利益についても、利用しやすい商品やサービスを通して利用者に直接還元している。
ろうきんも金融機関として、他の銀行と同じように窓口での預金業務や融資等のサービスを行っている。特徴的な業務としては渉外業務(外回りの営業)がある。利用者の皆さまへ訪問することで、単にお金を預り融資するだけでなく、お金に関する相談や悩み等を直接聞いて「助ける・サポートする」という身近な対応を行っている。実際に訪問した際に、利用者の方が「他行の融資を数件利用しており、借り入れが膨らんでしまい返済に不安がある」と相談を受け、他社の融資をろうきんの融資に1つにまとめることで、返済額を減らし不安を解消するとができた事例も紹介。
こくみん共済coop沖縄推進本部:坂田 拓海 氏
テーマ:労働者福祉にむけての事業
(1)こくみん共済coopの紹介 (2)生活協同組合について (3)共済のしくみについて (4)共済のはたす役割
(5)こくみん共済coopのあゆみ (6)SDGsの取り組み
こくみん共済coopは、生協法に基づいて厚生労働省の認可を受けて設立された共済事業を行う協同組合。人びとが自主的に集まって事業を行い、その事業の利用を中心にしながら、みんなで活動を進めていく営利を目的としない組織である。共済は、「生命系の保障・損害系の保障」、火災や自然災害発生時の住まいを保障する「住まいる共済」、団体ごとに加入する死亡や入院時の保障を行う「団体生命共済」等がある。共済に加入することによって自分の「もしも」に備えるとともに、自分の掛金が「もしも」が起きてしまった人の助けになるしくみになっている。
保障は就職した時や結婚した時、老後のために等のライフイベントのタイミングで考えることが多い。今の時点では保障について身近ではないかもしれないが、今回の話を覚えていて欲しいと講演。
【第14回:7月17日】航空連合:大山 克彦 会長
テーマ:ワーク・ライフ・バランスの実現について
(1)ワーク・ライフ・バランスとは何か? (2)関係者が果たすべき役割 (3)企業と働く者が果たすべき役割
(4)労働組合としての取り組み (5)国民が果たすべき役割
航空連合は、航空関連産業で働く仲間で結成された航空労働界を代表する最大の産業別労働組合で連合に加盟している。航空関連産業の魅力の向上や労働条件、職場の働く環境の整備等、国や県等への政策活動等も行っている。
ワーク・ライフ・バランスとは、「働く人が仕事上の責任を果たせると同時に、仕事以外の生活で取り組みたいことや、取り組む必要がある事に取り組めること」と定義されている。生活の充実により仕事の効率やパフォーマンスが向上し、短時間で仕事の成果を出す事ができ、プライベートの時間が増えるといった好循環を生み出すことが重要である。
日本は少子高齢化の進行により労働力人口の減少が経済に深刻的な影響を与える懸念からワーク・ライフ・バランスが注目されるようになった。経済成長や国の発展は、労働力人口に大きく左右される。航空業界でも人手不足が顕著となっており、人がいない故にお客様へサービスを思うように提供できない状態がある。少子高齢化が進む中で出されたのが、今働けるけど働いていない人、育児や介護等により働きたいけど働けない人に焦点が当たった背景がある。また、少子高齢化に歯止めをかけるためには、現時点の労働力だけでなく未来の労働力の確保=出生率の向上、子供を増やし安心して育てることができる環境構築もセットで考えなければならないのが現状の日本である。そこで出てきたワードが女性活躍や子育て支援・育児支援等であり、そのカギを握るのがワーク・ライフ・バランスである。
労働組合として定期的に会社管理職と労使協議を開催し、時間外労働削減やメンタルヘルス対策、人材育成、過重労働対策、コンプライアンスの徹底等、働く人を大切にしながらお客様への価値を高めていくため取り組んでいること等を紹介。
第15回:7月24日】連合沖縄:知花 優 事務局長
テーマ:講座のまとめ
(1)労働組合の役割、(2)社会的責任 (3)相互扶助 (4)社会人として知っておきたいこと
自らの経験として高校卒業後、土木作業や配達業、引っ越し作業、ファミレスのホール等でいろいろな仕事の体験談を紹介。その頃は、朝の5時から夕方5時まで休みなく働かされ、月に2日しか休みもなく、月10万円しか貰えなかった事もあった。支配人による暴言を受けたこともあった。今考えると恐ろしい働き方を強いられてこともあった。その後、郵便局に就職し労働組合と出会った。労働組合の活動を通じて、感じたことが「労働組合があるってこんなに助かるんだ。仲間がいるから仕事を守ることができ、働く環境も守られる」ことを気付かされた等と経験談を紹介。
日本に労働組合が出来たのは、第二次大戦で負けた後であった。戦争に負けた後、米国政府は日本に民主主義を根付かせるためには労働組合が必要と考え、戦後、本土では労働組合が結成されることとなった。しかし、沖縄は米軍に統治されていたため、日本とは逆に労働組合の結成を妨害されてきた歴史がある。
日本全体の労働者の中で、労働組合に加入している割合は16%しかない。この16%は、そのほとんどが大企業である。中小・零細企業はほとんど労働組合がない状況である。
労働組合の役割として、賃金改善や労働条件の改善、労使間トラブルの解決等がある。また、社会的責任として、平和行動や地域ボランティア活動、政治活動、相互扶助の共済制度も取り組んでいる。
社会人として労働問題が起きたときに知っておきたいこととして、沖縄労働局(労働基準監督署)や労働局のあっせん、沖縄県労働委員会、労働審判制度等について紹介。